地方再生は自らの手で

最近読んでいる本で、おもしろいものがあったので紹介します。

日本経済新聞社編「やさしい行動経済学」(日本ビジネス文庫)2017.12

「第5章 希望の役割を科学する」はとても示唆を与えてくれます。東京大学教授弦田有史さんは労働経済学の先生ですが、2005年に東京大学では「希望学」という学問を始めたそうです。全国の20~59歳の方へのアンケート調査(あなたは将来に対する「希望(将来実現してほしいこと・実現させたいこと)」によると2006年78%ある、2011年70%に低下、2014年54%まで下がっていたそうです。この数値はアメリカ93%、イギリス87%、オーストラリア89%、ドイツ97%、中国93%、韓国87%だそうで、日本がダントツに低い数値です。

また20~39歳までの人を対象にした調査「将来の自分の生活・仕事に希望があるか」では、07年55%がある、2013年35%まで低下しています。若者たちが将来に希望を持てなくなっているとしたらそれは大きな問題ですが、その原因としては簡単には言えませんが、時間、教育、健康、仕事などが紹介されています。

さらに人々とのつながり(ネットワーク)、挫折の経験、無駄を恐れぬ気持ち、野心、少年期の信頼のされ方、震災時の被害の大きさによる差も紹介されています。

ちょっとイントロ話が長くなりましたが、「地方再生は自らの手で」という部分を紹介します。地域が様々な現場において災害や人口減少、さらには高齢化の波の中で衰退したりしていますが、「希望に棚ぼたはない、誰かが希望を与えてくれるのを待っているだけでは、地域に希望は生まれません。希望は試行錯誤を積み重ねながら自分たちの手で作っていくものなのです」と。そして3つのポイントを指摘しています。

第1はローカル・アイデンティティ(地域らしさ)をみ磨き続けること。第2は地域の内外を越えて多様なネットワークを築くこと。そして第3は多様なニーズや力を持つ住民の間で対話を積み重ねること。だそうです。今まで自分たちが考えてやろうとしてきたことではありますが、基本に忠実に、そして地道に運動を継続していくことですね。

最後にこの本で指摘しているのは希望活動人口と言って、「地域の将来に希望があると公言し、その実現に向けて行動をしている人たちが大切で、こういう人たちが世代を超えて、性別を超えて増加していくことが地域の希望を広げる。」と結んでいます。(工藤)